数学的でない命題に自分を食わせる
「どんな法則にも例外がある」という命題があります。
この命題について考えるためには,まず「法則」とは何なのかはっきりとさせなければなりません。
例えばそうですね…英語における文法規則としてみましょうか。そして次のように捉えます:
規則1:肯定文は主語+動詞の順番。(例外:Never have I seen such a beautiful sunset.)
規則2:不完全自動詞の場合動詞の後に補語が来る。(例外:The cat is in the kitchen.)
:
規則xxx:任意の規則 n (1≦n≦xxx) について,これを満たさないような場合が存在する。
そして今後 xxx = 0 とし,規則0即ち「例外の法則」について,規則0自体がこれを満たすのかどうかを考えます。
次の2つの場合が考えられます。
(1)規則0を満たさないような場合は存在しない。
(2)規則0を満たさないような場合が存在する。
(1)の場合,規則0を満たさない例として,規則0そのものが挙げられるので矛盾,よって規則0は偽です。
ならば(2)は真か?規則0の存在によって命題の排中律が脅かされていることに注意してください。
(2)の場合,さらに2つの場合が考えられます。
(2.1)任意の規則 n (1≦n<xxx) が規則0を満たす。
(2.2)ある規則 n (1≦n<xxx) は規則0を満たさない。
(2.1)任意の規則 n が規則0を満たすならば,規則0自体が規則0を満たさないので矛盾します。
(2.2)規則0を満たさないような規則 n が存在するならば規則 n や規則0が規則0を満たさないので,規則0は真です。
よって矛盾の発生しない(2.2)のみが真実となります。
これを日本語的に言うと,例外の法則自体にも例外があるという結論が最も正しいということになります。
もう一つ,数学的でない命題を考えてみます。
「何事もほどほどに」という命題です。
例えば身長は高ければ高いほど良いわけではなく,(様々な条件を揃えてたくさんのパラメータをスカラー値に写像して考えれば)最適な身長 x0 cmが定まります。
さて,ここでまた新しい命題が生まれました。「身長は x0 cmに近ければ近いほど良い」です。これに対して「何事もほどほどに」を適用するとどうなるでしょうか。
「x0 cmに程よく近いのが良い」つまり「ある身長x1 cmとx2 cm (x1, x2は x0 に程よく近い)が存在して,x1 cmまたはx2 cmに近ければ近いほど良い」です。もう分かりましたね。このやり方を再帰的に繰り返すことによって,どんな身長についても,「それは最適ではない」ということになってしまいます。
この問題に対しては面白い解決策があります。
「x cmに近いほど良い」に「何事もほどほどに」を適用して「x cmに程よく近いのが良い」とする操作を何度も行おうとしているわけですが,この「何度も行う」というところに対して「何事もほどほどに」を適用すると,この操作はどこかでストップさせなければなりません。ほどほどなところで,です。
よって最適な身長がすっきりと求められることになります。
やってみたい人はこの理論を反駁してみてください。
以上です。読んで下さってありがとうございました。